【心療内科とは? 精神科とは?】

 「心療内科」とは、心身症(ストレスから来る病気)の患者さんを薬物療法だけではなく、カウンセリングや、心理療法等を併用して治療する科です。
 「心の面から治療する内科」あるいは「心理療法を用いる内科」ということが心療内科の語源かと思われます。

 「心療内科」自体は、古くからあったのですが、少し前までは、その存在を知らない方々も多かったかと思います。
 では、なぜ最近「心療内科」の看板をあちこちで見かけるようになったのでしょうか。
 その理由を少々ご説明させていただこうかと思います。
 法律によって、以前は、内科でも、消化器内科、神経内科、循環器内科、腎臓内科...といった細かい専門分野の「標榜(ひょうぼう:看板や、広告に書ける)」が可能だったのですが、その中に「心療内科」というものは長年含まれなかったのです。
 その理由は、「心療内科」なる科をもつ病院が、東大、九州大、東邦大の他、ごく一部の大学病院くらいにしかなく、内科の重要科とはみなされていなかったからなのです。

 もちろん、ストレスの多い現代社会で病気になっている方々の過半数を占めようかという心身症の方達の治療を主眼とする心療内科のような科が、多くの患者さんの求めている科であるという事は昔から変わりません。
 しかし、現代医学では、薬物療法(薬で治療する方法)がどんどん発達し、様々な薬の開発によって、病気への心の関与など考えなくても、薬で簡単に治せるようになってしまったのです。
 そのため、内科医は、心の面から患者さんを治療しなくても、つまり、心療内科的な治療をしなくても、簡単に患者さんの症状をとってあげられるようになってしまい、心療内科の存在意義が医学的にも、社会的にもなかなか認識されてこなかったわけです。
 内科に限らず、全てのドクターの9割方は、薬物療法や外科療法(手術)等だけで充分な治療をやってこれた訳ですから、「心の面からの治療」の重要性をあまり認識していないドクターが多かったというのも現実だったかと思います。

 でも、薬だけでは心身症の方が救われないのは当然なわけで、上記大学病院の心療内科の混み様は常に尋常ではなく、朝から始まる外来診察のドクターは、昼食抜きで、夕方まで患者さんに対応するという状態だったわけです。
 その実体などもふまえてか、平成8年に「心療内科」の標榜が可能になったのです。
 つまり、特定大学病院以外に、「心療内科」を標榜する病医院が出てくれば、患者さんが分散し、より多くの心身症の患者さんが充実した治療を受けられるだろうという厚生省のおもわくもあったのではないかと思います。

 以上が、最近「心療内科」を標榜する病医院が増えてきた主な理由です。

 さて、実際には、内科に受診する患者さんの大部分は、何らかのストレスが原因となって病気になったり病状を悪化させているわけで、全ての内科医は毎日「心身症」の患者さんを診ているわけなのです。
 しかし、ほとんどの内科医は薬物療法を主体に治療しており、ストレスを取ったりストレスをためないよう簡単なアドバイスをする医者さえまれかもしれません。

 心療内科が患者さんに非常に人気があるのは、内科の先生でありながら精神的なアドバイスもしてくれる点が、ストレスから病気を作っている現代人にマッチしているからでしょう。
 ただ、ストレス解消と自己改革の方法(瞑想等)を知らない患者さんが、心療内科の先生にアドバイスを受けても、自分を変えることは非常に難しく、結局薬とは縁を切ることができないばかりか、主治医への精神的依存から、「病院通いが生き甲斐」のような患者さんになっている人がかなり多いというのも実体のようです。

 さて、心療内科に関連する診療科で

 「精神科」

 というものがありますが、これは、精神病患者(精神分裂病、躁鬱病がその代表)を扱い、一部の心身症以外の内科系の病気は扱いません。
 もちろん精神病患者が内科系の病気(例えば、高血圧、糖尿病等)を合併している場合、精神科医の技量の範囲内であれば診断治療をおこなう事はあり得ます。

 ただ、心のストレスをかかえている患者さんが、その症状に関係した科、例えば、耳鳴りなら耳鼻科、腹痛なら消化器内科、頭痛なら神経内科や脳神経外科などに受診して薬物療法を受けても思うように良くならない場合の受け皿の一つが、以前はごく限られた大学病院の心療内科だったわけですが、もし近くに心療内科がない場合などには、しょうがなく、精神科の門をたたかざるを得なかったという事もあったわけです。

 ですから、「心療内科」標榜の認可が厚生省から下りるやいなや精神科の病医院がこぞって「心療内科」を看板に掲げだしたのはある意味では当然のことだったかもしれません。
 今や、「心療内科医」の9割方は、最初に精神科のトレーニングを受けた医師かもしれません。

 しかし、心療内科は読んで字のごとく、本来、「心の部分から治療する」「内科」或いは、「心理療法を使用する」「内科」として、内科から分化した科だったわけです。
 もちろん、精神科出身で心療内科医を名のっている医師は、精神科の他に内科の基礎的な知識もお持ちだとは思いますし、他科の医師に比べて心理療法にたけた精神科出身の医師であり、しかも内科の知識も相当ある医師であれば、まさに心療内科医であると言えるでしょう。
 ですから、心身症ではない病気(例えば、軽度のくも膜下出血による頭痛や嘔気、例えばバセドウ病による動悸、例えば結腸癌による腹痛、等々)と精神病が区別できるような精神科医であれば心療内科医を名のられるのは至極妥当な事かと思います。

 ただ、精神科の先生が、たとえ精神病の知識が充分であっても、内科的病気の診断治療のトレーニングを受けていない場合などに、心身症と思われる患者さんを診る際には、慎重になっていただきたいとは思います。
 自分の技量の範囲を超えている、あるいは、自分の専門外であると考えたら、速やかに他院に紹介するという事は私もやっていることですし、精神科の先生方にもお願いしたいと思います。

 精神科以外にも、似たような標榜科がありますが、それらを掲げている病医院の担当医師が、どんな病気の専門家なのかについて、ちょっと触れておこうかと思います。

 まず、

 「神経科」

 という科をよく見かけます。

 これは、非常に定義があいまいな科で、この科を掲げている病医院の担当医師の多くは、

 「精神科出身………その科でトレーニングを積んだという意味」の医師でしょう。

 「精神科」という名前を掲げると、精神病ではない心身症の患者さんにとって、その病医院の門をくぐりづらい、という患者心理を配慮してこんな名前を掲げているのかと思われます。

 また、
 「神経内科(例えば筋萎縮性側索硬化症などといった脳神経系の病気を扱う科)出身」
 の場合もあれば、

 「脳神経外科(例えば、脳腫瘍や、くも膜下出血などを手術によって治す科)出身」
 の医師の場合もあります。

 ですから、「神経科」への受診を考えている場合、評判などで、どんな病気の人がかかっているのか前もって知っておいたほうがよいかもしれません。

 それから、「神経科」に似た言葉に

 「精神神経科」

 なるものも良く見かけます。
 これを掲げているのは、ほとんどの場合、「精神科出身」の医師でしょう。

 「精神科」と標榜しないのは、神経科同様、患者さんの心理を考慮しての事かと思います。

 また「精神科出身」の医師の中にも、ある程度は、「神経内科」の素養もあるという医師もいる可能性はありますので、そんな意味からもこういった、「精神神経科」なる科を掲げている可能性もあるかもしれません。



 さて、以前、「心療内科関係の入門書」がないかと一般の方から聞かれた事があります。
 しかし、はっきり「心療内科的治療法」を解説した本は、医師向けの専門書になってしまうのではないかと思います。
 従って、「素人さん向けの心療内科関係の入門書」に関しては、「ない」と言えなくもないのですが、実は「交流分析(TA)」で用いられる「エゴグラム」という性格パターン分析法が、多くの心療内科の先生が利用なさっている方法なのです。
 したがって、本屋さんの「心理」等のコーナーにいけば、「交流分析(TA)」や「エゴグラム」関係の本がたくさん置いてありますので、良さそうなものをお読みになれば、自分や他人の心理分析に大いに役立つはずです。
 しかも、こういった関係の本の著者の多くが、心療内科の先生方なのです。
 ですから、ある意味では、「素人さん向けの心療内科関係の入門書」といえなくもないかと思います。

 ただし、交流分析でいくら人間心理に精通しても、人間心理が、潜在意識に根ざしている以上、その潜在意識の部分から自分を改革する方法(瞑想等)が基本になければ、机上の空論に終わってしまう可能性もあるという点はご承知おきいただきたいかと存じます。

 「交流分析(TA)」って何かということですが、
 これは、人間の性格を潜在意識の部分から分析することによって、人間関係をより良くしてストレスを減らしたり、誰からも好感のもたれる人間性を身につけたりするのに効果のある、性格分析法です。
 そして、「エゴグラム」は、心理テストによって、交流分析上、その人がどんな性格パターンかをわかりやすくした分類法なのです。

 これについては、【人間的魅力をアップするには?】の項の中の●心の柔軟性を身につけるには●の所にもう少し詳しく書いてありますので、ご興味があればご参照下さい。



【心療内科医を目指す方へ】

 私は医学生時代から心療内科には興味があったのですが、いわゆる心療内科の医局に属したことは一度もありません。
 大学病院および関連病院で内科全般のトレーニングを受け、基本的には一般内科医(general physician)のエキスパートを目指して研鑽を積んできました。

 内科に受診する患者さんの80%以上は心身症だともいえるのですが、他にも多種多様な病気が存在しますし、心理療法だけでは治らず、いわゆる薬物療法が不可欠な病気も、数多くあります。
 そういった病気を含めて的確な診断治療ができる実力があればこそ、心理的な側面からの治療が最優先されるべき病気であるのかどうかの判断も確実になるわけです。
 ですから、もし、将来、医師になって、心身症を心理学的アプローチによって治療したいとお考えの方がいらっしゃれば、最初から大学の心療内科の医局(前にも申し上げたように、心療内科の医局を持つ大学は非常に少ないです)に所属されるのも良いかもしれませんが、その際にも同時に、一般内科医としての技量を磨くことはぜひ続けていただきたいと思います。
 また、心療内科には所属せず、一般内科医としてのトレーニングを積みつつ、心理的な側面からのアプローチを常に考慮する姿勢を持ち続けるという私のようなやり方もあるのではないかと思います。

 私の場合、心身症という側面を見据えた治療がいかに大切かということを開業してから特に感じたものですから、必要であれば時間を割いてカウンセリングをやったりもするようになってきていたわけです。
 そういった経験や、私の精神世界の探求から生まれたのが私のホームページの内容なのです。
 マイナス思考のひどい方には、まず私のホームぺージのコピーをお渡しして一読していただくため、カウンセリングも短時間ですむようになり重宝しております。

 繰り返しますが、もしあなたが、将来、医師として、「心身症」の方々を「心理的なアプローチで治したい」という気持ちがあるのだとしても、まずは「きちんとした内科医としての技能は最低限身につけて」いただきたいと思います。
 「まず、精神科の技能を身につけてから内科の知識を身につける」というのは、あまりお勧めできません。
 なぜなら、「内科医に要求される知識量、技能量」というものは、精神科医に要求されるものと比べ、「相当膨大な量」なので、医師になって、なるべく知識、技術を吸収しやすい若い時期に内科のトレーニングを積んでおかないと、心身症なのか、それ以外の大変な病気なのかの区別さえうまくできない医師になってしまう可能性がでてくるからなのです。
 更に、心身症とはいっても、やはり薬物療法はほとんどの場合不可欠なわけですから、内科的な病気の診断法、治療法を確実に身につけておかないと、治るものも治せない中途半端な医師になってしまう可能性も出てくるからです。


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